こもれびに揺れる魂のこえ
ブランド名 ユニゾンシフト ジャンル ハートサプリメントAVG
発売日 2003.07.11 定価 \8,800
パッケージ 紙製パッケージ(233x190x32mm) マニュアル ブックレット
DISC容量 DISC1 : 631.4MB、CD-DAなし、SafeDisc
DISC2 : 479.6MB、CD-DAなし
原画 いとうのいぢ シナリオ 市川環
音声 主人公以外フルボイス、
日向裕羅、北都南、木村あやか、佐々留美子、海原エレナ、野神奈々、毛礼流モレ夫、
須本綾奈
インタフェース キーボード操作不可 描画 Window・フルスクリーン両対応、
800x600
セーブ箇所 35箇所 あり(1曲、ED)
おまけ CG MODE、H SCENE PLAY BACK、BGM MODE、店頭デモMOVIE
対象属性 純愛、癒し系、黒髪、ストレートロング、リボン、無口、ショートカット、眼鏡っ娘、
ツインテール、帽子、ボブカット
1プレイ時間 5〜6時間 お奨め度 6

レビュー
概要
小さな村で牧師をやっていた主人公の元に、ある日1通の手紙が届く。
その手紙には、少女達に愛を与えてくれという依頼が書かれていた。
その手紙に染みついた匂いに懐かしさを覚えた主人公は、指定された場所に
行くことを決心する。自分の失われた過去の記憶を取り戻せるのではないか
という淡い期待と共に……という、ハートサプリメントAVG。
キャラクター・CG・音声・音楽
キャラクターは以下の通り。

スイ。(CV:日向裕羅)
施設で暮らしている娘。無口で無表情。感情の表現に乏しい無垢な少女。
呼ばれない限り部屋から出てこない。

橘コハル(たちばなこはる)。(CV:木村あやか)
施設で暮らしている娘。優しく大人しく、よく気の利く利発な少女。
軽い対人恐怖症で、ちょっとドジ。
# メーカのサイトにて、声優さんが実は須本綾奈さんの誤記だったという
# 訂正がなされています。……無茶苦茶な誤記だな、おい(^^;

高円寺アヤナ(こうえんじあやな)。(CV:北都南)
施設で暮らしている娘。勝ち気で自由奔放。
素直になれず、いつも突っかかってくる。

宮代ツバキ(みやしろつばき)。(CV:佐々留美子)
施設に定期的に物資を運んでくる娘。
いつも笑顔を絶やさない、柔らかい雰囲気の少女。

萩谷マオ(はぎやまお)。(CV:海原エレナ)
三つ子を連れて施設を訪れた謎の女性。

トウア。(CV:野神奈々)
三つ子その1。人なつっこく誰とでも明るく接する。いたずらっ子。

アキノ。(CV:野神奈々)
三つ子その2。恥ずかしがり屋で常にトウアやナツキの陰に隠れている。

ナツキ。(CV:野神奈々)
三つ子その3。人に構われるのが苦手で、そっけない話し方をする。

絵の方は独特の雰囲気を持った可愛らしい絵ですね。淡い色使いと柔らかい
タッチで儚げな雰囲気が出ていていい感じです。ただ、たまに線が太くて若干
背景から浮いた感じの絵があったのは残念ですが。そういった絵はHシーンに
多かったですね。服を着ているとあまり線の処理は気にならなかったりしますし。
# 「窓はなく」と書かれている時に表示されている絵には、めちゃめちゃでっかい
# 窓があるのはご愛敬(笑)

立ち絵はポーズ変化がそこそこ用意されていて、表情は豊富でアクションが
大きいため、感情がよく伝わってきてよかったです。感情移入しやすいですね。
スイが微笑んだ顔とか、むっちゃくちゃ可愛いです(^^)

キャラクターはみんな独特の雰囲気を持っています。個性豊かで様々な
タイプのキャラがいるのですが、作品の雰囲気が落ち着いた雰囲気のため、
活き活きしているというより儚げな感じですね。
# トウアはやかましいですけど(^^;

音声はキャラクターとのマッチングも良く、演技の方も全く問題なし。
ただ、スイはぼそぼそと喋ることが多いため、やや聞き取りにくかったかも。
元気なキャラクターと物静かなキャラクターとの差が大きいので、もう少し
レベルの調整をしっかりやるか、個別に音量が変えられると嬉しかったかも。

音楽はゆったりとした落ち着いた感じの曲がほとんど。非常に綺麗な旋律で
単体で聴いても充分楽しめます。
おまけのBGM MODEでは、1曲ずつ曲の解説が入っていていいですね。

で、音声・音楽についてですが、私の環境では音声・音楽ともにラップ現象が
発生しました(T_T)
DirectX絡みの問題かと思ってアクセラレーションをなしにしてみたりとか色々
試したんですけど改善されず、サポート依頼も出したのですが返事が返って
きませんでした。
なので、せっかくクオリティの高い音声・音楽を、100%堪能することは出来ず、
残念です……。

オープニングはなしで、エンディングは歌あり。
ただ、歌の上にセリフが被っていたりして、歌だけを楽しむことがほとんど
出来ないのはちょっと残念ですけど。(おまけのBGM MODEで可能ですが)
歌自体はしっとりとした切ない歌で、心に染み入ってくる感じです。
システム
システムに関してですが、このゲームはSafeDiscによるプロテクトがかかって
います。はい。お約束通り誤爆しました(T_T)
しかも今回は、インストールの時と起動時のダブルでチェックがかかっている
ようで、インストールは3回リトライしてなんとか通ったのですが、起動は5回に
1回ぐらいしか通らないという寂しい状況。サポートを依頼するも対応が遅く、
有効な対応はして貰えず。プロテクトをかけるならかけるで、誤爆した人に
対するサポートはきっちりしていただきたい。
チェック通らなかったときは10分ぐらい固まるんですから……(T_T)

それとインストーラに関してですが、インストールファイルのチェックと称して
全ドライブの全ファイルを総なめしている模様。大容量のハードディスクを装着
していて、なおかつデータがいっぱい入っている状態だと、このチェックだけで
10分以上かかる可能性があります。いったい何を思ってこんなおかしなことを
やってるんでしょうね。理解できません。

インタフェースはキーボード不可。……感じ悪っ(^^;
既読スキップ、強制スキップ、バックログ搭載。
バックログはマウスのホイール機能には対応しておらず、操作性自体もあまり
いいとは言えませんね。(ホイールボタンの押下で表示できるようですが)
そして既読スキップですが、未読メッセージでもスキップしてくれることが多々
あります。個別ルートに入ると止まるのですが、共通部分で選んだことのない
選択肢を選んだときなんかはサクッと飛ばしてくれます。
まあ、共通部分ではどの選択肢を選んでも似たような展開になることが多々
あるのですが……。

描画はWindow・フルスクリーン両対応。画面サイズは800x600です。
動作の方は比較的軽快。ただ、話が切り替わる時に表示されるアイキャッチが
スキップできないのはちょっと鬱陶しいかも。メッセージスキップ時には一瞬で
表示されるんですけどね。

セーブ箇所は35箇所。セーブ/ロードは随時可能です。
セーブデータはセーブ日時の他、シーン画像と3人のヒロインのうち誰をクリア
したかが保存されます。
数としてはこれだけあれば足りるかなーとは思うんですけど、もう少しあっても
いいかもですね。

システムはオーソドックスな選択肢決定型のアドベンチャー。
どの選択肢を選んでもその後のメッセージが変わらないことが多く、選択肢の
効果が解りづらいのが難点ですが。
シナリオ・プレイ感
ゲームの方は、主人公の元に1通の手紙が届き、その手紙に従い、ある施設を
訪れる所から始まります。
ちなみに、2回目のプレイからは手紙をなかったことにすることが可能です(笑)
# なんでまたこんな愉快な選択肢が出てくるのか(^^;

そして訪れた施設には3人の少女が暮らしており、手紙に従ってその女の子達と
暮らし、愛を与えていくという話です。

ストーリーは終始ゆったりとした雰囲気で進みます。それほど大きな事件もなく、
あっても淡々と描写されるため大きく盛り上がったりはしません。
静かな雰囲気を大事にして進んでいくような感じですね。

ラストはしっとりとした切ない終わり方。全て解決して綺麗に爽やかに終わる
という感じではないのですが、心に染み入る、余韻の残るような終わり方で
よかったです。ラストの演出もなかなかいいですね。

ハッピーエンドも勿論いいのですが、個人的にはバッドエンド(スタッフロールの
流れないエンド)が、なかなか切なくて好きだったり。
ハッピーエンドよりも説得力があるというか、現実的な終わり方のものが多くて、
入り込みやすかったです。

難点としては、1回クリアすると全員の設定がほぼわかってしまうので、2回目
以降のプレイではややドキドキ感に欠けること。
個別ルートに入っているキャラ以外の情報は小出しにして、個別シナリオに
入ってから説明していけば、もう少し新鮮さも出せたんじゃないかな、と思うん
ですけどねー。

H度は低め。メインヒロインには複数回用意されているのですが(本番はなしの
場合もありますけど)、描写の方があっさり目というか、初々しい感じのする
シーンがほとんどのため、Hさはあまり感じませんでした。相手に語りかける
ようなセリフが多いので、穏やかな癒されるような雰囲気の漂うシーンが多い
です。そもそもゲームの雰囲気から、あまりHシーンというのが想像できない
ような感じですので、濃厚なシーンが入っていたらそれはそれで浮いてしまうと
思いますけど。(一部、ややキツいシーンもありますけど)
しかし主人公、牧師のクセに平然とHはするわ、あまつさえ中出しですか(^^;

テキストは……かなり微妙。まず、文章1つ1つが長く、読点が少ないために、
読んでいてテンポが悪く、疲れます。そもそも読点を打つポイントがちょっと
ズレているというか、会話のテンポと合っていない気がします。
実際、セリフ(音声)を聞いているとテキストの読点の位置とは全然違うところで
切って(ブレスを入れて)いたりしますから。
そして、三点リードや記号の扱いもなんかおかしいです。三点リード(……)の
かわりに中点(・)が使われていて、その数も2〜5つと可変。「間」を表したいの
かも知れませんが、これが結構読みづらいです。
そして、行の先頭に『」』が来ることも結構多かったです。しかも、その直前の
文字が『・・・・』の場合が多々あって、これは少し気を付けるように(『・』の数を
1つ減らすとか)すれば、回避できたと思うんですけど……。
誤字はそんなには気になりませんけどちらほら見受けられますし、ちょっと
丁寧さに欠けるように思えます。
# 「恐怖も恐れも感じてなかった」……意味、一緒でわ(^^;
プレイ時間・難易度
ゲーム期間は不明。それなりに日数経過はあるようですが、ゲーム内では
日付の概念は出てきませんでした。

ワンプレイは5〜6時間。ゆったりした雰囲気で進むため、やや長く感じました。
ただ、個別シナリオに入ってからは1時間程度で終わりますので、2周目以降は
スキップを使えばかなり時間は短縮できると思います。
# というか、共通部分はほぼ全てスキップが可能です(^^;

難易度は低め……だと思うのですが、どの選択肢を選んでもその後の展開が
変わらないことが多く、選択肢の効果が解りづらいために本当に思ったとおり
進んでいるのか不安になります。
そして、選択肢を1つ間違えるだけでバッドエンドに直行することもありますので
注意が必要ですね。まあ、バッドエンドも見ておいて損はないと思いますけど。
総評
お奨め度ですが、ちょっと切ない純愛ストーリーが好きな人にお奨め。
それぞれ心に何かを抱えている少女達が、徐々に心を開いていく過程がとても
丁寧に描かれており、話に入り込みやすかったです。
終始ゆったりと穏やかな、そしてちょっと切ない雰囲気が漂っており、きっちり
世界観を作り上げてあるのは素晴らしいと思います。
まあ、裏返せば淡々として大きな盛り上がりのない、メリハリに欠けた平坦な
ストーリーと言えるかも知れませんが、決してつまらないわけではないですし、
こういった雰囲気を持っている作品はなかなかないと思いますから、雰囲気を
重視したことは良かったと思います。
テーマである「ココロの成長」や「ふれあい」は見事に描かれていますし、
キャラクター同士の会話もとても自然で、雰囲気を醸し出しています。

そうした非常にいい雰囲気を持つこの作品ですが、システムの問題とテキストの
問題で、雰囲気に浸りきれなかったのがちょっと残念ですね。

システムの問題については、プロテクト誤爆や音楽・音声のラップという、環境
依存の問題と、やや使いづらいインタフェース、共通パートの未読管理の問題
など、細かいところでいろいろな問題が見受けられます。
環境依存の問題はある程度仕方ないかも知れませんが、私にとってはこの
音声・音楽のラップが一番感情移入の妨げになったので残念でなりません。
あと、これも個人的な話ですが、キーボード一切不可というのも寂しいです。

そしてテキストの問題。雰囲気を重視したこの作品では、会話の「間」という
ものを大事にする必要があると思うのですが、その「間」を表現する読点や
中点の打ち方が微妙で、ともすれば雰囲気を壊しかねないのが残念です。
テキストの通りに声に出して読んでみると、明らかに文章としておかしいと
思える所が多々ありますので、もう少しきっちりチェックして欲しいですね。
セリフに関しては、声優さんがきっちり間を空けてくれるので聞きやすいの
ですが、セリフではない地の文はやっぱり読んでいてちょっと疲れます。
音声をOFFにしてプレイすると、かなりキツいと思われます。

その声優さんの演技も、極力元のテキスト(読点の位置)に合わせて最低限の
ブレスだけを入れる人と、元のテキストよりも会話の「間」を重視して丁寧に
プレスを入れる人と、演技の質がはっきり分かれていました。
こういう所で声優さんの個性が出て来るというのはなかなか面白いですね。

こうして問題も抱えてはいるのですが、これだけ雰囲気を大事にした作品は
なかなかないと思いますし、キャラクターの心情描写などもとても丁寧で、
ちょっと切ないながらも癒される、非常に落ち着いた良い作品だと思います。

システムの問題はどうしようもないですが、テキストの問題に関しては声優
さんの演技でカバー出来ていると思いますので、それほど気にすることは
ないかと思いますし。

お奨め度は6としていますが、プロテクト誤爆やインストーラ、音声のラップ
なども考慮した点数になっていますので、そういった環境依存の問題がなけ
れば間違いなく7をつけたかと思います。作品の出来としては充分それだけの
完成度はあると思いますので。

パッケージや広告などから受ける印象そのままの作品だと思いますから、
雰囲気が気に入った方は是非どうぞ。
# 私は事前に思っていたよりさらに切ない感じでしたが。

最後に、三つ子って結局何しに出てきたんですか?(^^;
# 賑やかし?(笑)


以下、ネタバレを含む突っ込みなど。

ツバキって主人公の半身である人の孫ですよね? その人は成長が早いわけ
ですが、その子供は普通に成長しているわけで、ツバキが生まれるまでに
その人は老い果ててしまうような気がするのですが(^^;
どこかのタイミングで成長が止まったのでしょうか?

それと、主人公の狂気の理由がいまひとつよく解らなかったのですが……。
# 単なる二重人格さん?(^^;
##それとも、3つの魂のうちの残りの1つが入っているのでしょうか……。

まあ、少女を癒すだけでなく、本当は主人公が癒されているという展開は
なかなか良かったので、それで良しとします(^^)

ちなみに私が一番好きなのはコハルシナリオです。このシナリオはとてもよく
できていると思いました。教会の前での話とか、眼鏡とガラス玉の話とか、
伏線も見事に張り巡らされていましたし。このシナリオがメインという感じですね。
# このシナリオはクリア順制御がかかってるっぽい?



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