そこに海があって…
ブランド名 mirage ジャンル マルチアングル恋愛AVG
発売日 2003.12.19 定価 \8,800
パッケージ DVDタイプのトールケース(135x190x15mm) マニュアル DVDジャケット裏
DISC容量 3.74GB(DVD-ROM)
原画 海野@ シナリオ 泉堂叶、長森茜、くろちび
音声 女性フルボイス、海原エレナ、北都南、乃嶋架菜、日向裕羅、森ヒロリ、成瀬未亜
インタフェース ほぼフルキーボードサポート 描画 Window・フルスクリーン両対応
セーブ箇所 30箇所+クイックセーブ10箇所 あり(7曲、OP・ED・挿入歌)
おまけ CG鑑賞、音楽鑑賞、回想
対象属性 学園物、銀髪、リボン、浴衣、女医、白衣、ポニーテール、秘書、幼なじみ、眼鏡っ娘、
お下げ、触角、オーバーニーソックス、巫女さん、巫女装束、スクール水着、黒髪、
ショートカット、金髪、ツインテール、ピンク髪
1プレイ時間 5〜6時間 お奨め度 5

レビュー
概要
主人公は、のどかな島で祖父と暮らしている平凡な学生。そんな主人公はある日、
浜辺で倒れている少女を助ける。しかしすぐに、少女の父の命を受けた人達が
少女を連れ戻しにやってくる。少女ともっと一緒にいたいと思いつつも、仕方なく
身柄を引き渡す主人公。しかし次の日、学園に行ってみると、その少女がなんと
転校生としてクラスにやってきた。幼なじみの美奈萌、碧唯に、その少女・夕凪も
加わり、楽しい学園生活を送る主人公。しかし、徐々に平和な日常は崩れ、運命
の歯車は狂い出す。果たして主人公はどうなるのか。謎の少女、夕凪の正体とは
……という、マルチアングル恋愛AVG。
キャラクター・CG・音声・音楽
キャラクターは以下の通り。

緒方夕凪(おがたゆうなぎ)。(CV:海原エレナ)
主人公が海岸で助けた少女。主人公の学校に転校してくる。
無口で感情表現に乏しい。致命的に世間知らずで、いつも突飛な行動を取る。
しかし、基本的には素直ないい娘。

海原夏海子(かいばらなみこ)。(CV:北都南)
海原診療所の女医さんで、学園の医務室にも非常勤で勤めている。
主人公には昔から何かと世話を焼いてくれる、いいお姉さん的存在。

黒川理佐(くろかわりさ)。(CV:森ヒロリ)
夕凪の父親の秘書。クールでやや高圧的。

鮎川美奈萌(あゆかわみなも)。(CV:日向裕羅)
主人公の幼なじみ。大人しくて人見知りが激しい。思い込みが激しく、
嫉妬深い一面も。

鰍山碧唯(かじやまあおい)。(CV:乃嶋架菜)
主人公の幼なじみ。明るく元気で騒がしくて乱暴。プロレスが大好き。
すぐに手が出る。

絵の方は、可愛らしくあまりクセのない絵。ただ、髪型は特徴的ですね。
やたら触角(アホ毛)キャラが多いですし、碧唯に至ってはもはやあり得ない
髪型になってますし(笑) でも、個性的で結構好きです。
CGの処理も綺麗だとは思うのですが、立ち絵の塗りがちょっとべたっとしている
印象がありますね。かと思えば、調理実習の時みたいに綺麗な絵もありますが。
ちょっとばらつきを感じます。イベントCGに関しては問題なしです。
立ち絵は表情変化・ポーズ変化ともにあり。目パチ・口パクもあって、会話は
とても楽しく、感情移入もしやすいです。
さらに、各所にアニメーションがちりばめられていて、Hシーンに至っては、ほぼ
フルアニメーション状態になります。こちらの絵は、さすがに1枚絵ほどではあり
ませんが充分綺麗でなかなかよく動いていますし、良くできていると思います。
立ち絵よりクオリティ高いのがなんとも。もう少し立ち絵も頑張れ(^^;
# カラオケシーン、アニメーションになってるし、歌声全く別人だし、途中から
# イメージビデオみたいになってるし!(笑)

キャラクターは強烈な個性を放つ面々揃い。中でも夕凪の言動は、あまりにも
突飛で見ていてハラハラします。
最初は美奈萌萌えだったんですが、プレイしているうちに激しくポイントダウン。
いくらなんでもこの扱いは酷すぎます(^^;
ということで潮里萌え。←サブキャラ過ぎます
# このキャラも、ひっどい扱いを受けるわけですが(^^;

音声はキャラクターとのマッチングも良く、演技の方も良好。みなさんとても安定
しており、安心して聴けます。
ただ、サブキャラに関しては兼ね役が多くて、あちこちから同じ人の声が聞こえて
来る印象がありました。北都南さんなんて、いったい何役やってるんですかという
感じですね(^^; というか、ヒロインよりも重要な役所のサブキャラをやっていたり
するんですが……。
成瀬未亜さんの声もあちこちから聞こえてきますね。こちらも重要な役所である
キャラクターをやっているのですが、もれなく扱いが悪い気が(^^;

音楽は、澄んだクリアな感じのサウンドが多め。どの曲も綺麗な旋律で、かと
いってあまり自己主張しすぎることもなく、BGMらしいBGMという感じですね。
うまく雰囲気を盛り上げてくれると思います。ただ、もう少し激しい曲なんかが
あっても良かったかな、と。全体的に上品すぎかも。

ゲームを起動するとオープニングアニメーションが流れます。
歌は幻想的な雰囲気の漂う独特の歌。民族音楽っぽいてす。
絵の方も、歌に合わせた幻想的な雰囲気を持った絵。TVアニメと比べても遜色
ないぐらい動いていて、とても見応えがあります。

エンディングも歌あり。歌はエンディングごとに違っています。
ほとんどがとてもしっとりとした切ない歌で、心に染み入ってくる感じです。
システム
インタフェースはほぼフルキーボードサポート。タイトルメニューと、視点の切り
替え以外は全てキーボードで操作できるっぽいです。
既読スキップ、強制スキップ、バックログ、手放しモード搭載。
既読スキップは、自動的にスキップする設定も可能。
……システム的に、ほとんど役に立たない機能なんですけどね(^^;
バックログはマウスのホイール機能にも対応しており、音声の再生も可能です。
設定次第では、メッセージ送りもホイールで可能です。
基本的な機能は画面右下にアイコンで登録されています。ただ、アイコンがやや
小さくてちょっと押しづらいかも。

描画はWindow・フルスクリーン両対応。動作の方は軽快。

セーブ箇所は30箇所+クイックセーブ10箇所。セーブ/ロードは随時可能です。
クイックセーブは、設定によって選択肢の前で自動的にセーブするように設定
したり、ザッピング可能になったときに自動的にセーブしするように設定したり
出来るようになっています。……選択肢なんて、両手で数えられるぐらいしか
ありませんけどね……(笑)
セーブデータはセーブ日時の他、誰の視点かと、ゲーム内日付が保存されます。
数としては充分すぎます。全選択肢でセーブしたとしても、半分以上余ります。
通常はほとんどクイックセーブで事足りますし。

システムは、選択肢決定型+視点変更型のアドベンチャー。
選択肢は数が非常に少なく、シナリオによっては選択肢がないものもあったり
しますので、ほとんど意味は感じません。
そして視点切替ですが、これはシナリオ中に視点を切り替えることによって、
その時に他のキャラクターはどう思っているか、どう行動しているのかを知る
ことが出来ます。視点切替の出来るタイミングはやや解りづらいのですが、
設定次第で視点切替が出来るときにクイックセーブしてくれますので、それを
利用すれば良いでしょう。
そしてこのゲームは、クリアする毎にルートが増えていくシナリオ追加型の
システムになっています。基本的に同じシナリオを、別の視点から見ていくと
いう形になっていて、シナリオ中の視点変更システムと合わせて、各キャラが
話の中でどんな気持ちを抱いているか、どんな行動をしているかがより詳しく
わかるようになっています。
シナリオ・プレイ感
ゲームの方は、主人公が謎の少女・夕凪を助けるところから始まります。
そして、夕凪が学園に転校してきて、その言動に振り回されつつも毎日を過ご
していきます。

前半は、明るくコミカルな学園物という雰囲気で進みます。
主人公と幼なじみ2人、そして夕凪の4人を中心として、ドタバタのストーリーが
展開します。それぞれのキャラクターの心情描写が上手くなされており、この
パートでほぼキャラクターの性格が掴めます。

そして後半、徐々に重くシリアスでダークな展開になっていき、ドロドロとした
話になります。前半の雰囲気とはがらっと変わり、各キャラクターもそれぞれが
持っている嫌な部分、暗い部分が表に出てくる感じで、人間の心の醜さを見せ
つけられる感じです。所々かなりキツい描写もあって、プレイしていて、とても
沈痛な気持ちになりました。

ラストもあまりすっきりとしたものでなく、どこか後味の悪いものが多くて、
ちょっと手放しで楽しめる作品ではないように思います。

特筆すべきはキャラクターの心情描写でしょう。各キャラクターの心情が上手く
表現されていて、さらにザッピングシステムを使うことによって、その時にその
人がどう思っているのかが解り、心の動きがとても掴みやすいです。
ただ、後半各キャラクターの行動が一変するのですが、それがちょっと唐突に
感じるキャラもいて、後から補完されるにしても、やや説明が弱いと感じる
こともありました。

Hシーンは並。数は殆どのキャラが複数回(各シナリオ中では1回)用意されて
いて、尺の方はそこそこ、描写もそれなり。基本的に純愛系のシーンが殆どで、
突飛なシーンなどはほとんどありません。これだけならH度薄めと判断しても
おかしくないのですが、この作品はHシーンにふんだんにアニメーションが使用
されており、視覚効果や演出に優れています。そのため、感情移入がしやすく、
テキストだけではなかなか伝わらない部分も、映像で感じることが出来、結果
なかなかに面白い出来に仕上がっていると思います。
もちろん、静止画の1枚絵に比べればクオリティは落ちますが、それでも充分
鑑賞に堪えうるもので、それが結構動いていて、なかなか凄いと思います。

テキストは、誤字はほとんど目に付かず、禁則もしっかりしています。
文章自体もクセがなく、すんなり入っていける感じですね。
ただ、メッセージの文字が小さめで、ちょっと読みにくいかも。
それと、画面に表示されているキャラクターが喋る場合、顔の横に吹き出しが
出てそこにセリフが表示されるのですが、主人公のセリフや地の文は、画面
下部のメッセージウインドウに表示されるため、視線移動が多くてちょっと疲れ
ます。そして、メッセージウインドウの色や文字色がどのキャラクターも同じため、
誰が話しているのか一瞬わからなくなることも。特に、画面外にいるキャラが
話した場合にそれが顕著です。
地の文やモノローグはメッセージウインドウの色や形が変わるわけですから、
各キャラクターもそのあたりは変えて欲しかったなぁ、と。
プレイ時間・難易度
ゲームは9月1日の日曜日から始まります。ゲーム期間は1ヶ月弱。

ワンプレイは5〜6時間。ただし、これは最初のシナリオをザッピングを全く使わず
プレイした場合で、全ての場所でザッピングをしながら進めると、もう少し時間は
かかると思います。

難易度は低め。ゲーム全体を通して選択肢が両手で数えられる程度ですので、
殆ど悩むことなく進められると思います。
ただ、ザッピングを使わないと回収できないCGがありますので、その点は注意。
総評
お奨め度ですが、人間の心の暗い部分を描いた、ドロドロとしたダークで鬱な
作品が好きな人にお奨め。前半は比較的明るく楽しいのですが、後半はそう
いうシーンは一切排除して、ひたすらシリアスで暗い展開が続きます。
かなりショッキングなシーンもありますので、耐性のない人にはかなりキツいと
思います。

シナリオをクリアすると、別の視点からゲームをプレイすることが出来るように
なり、同じ話をいろんな視点で見ることになるのですが、それによってその時
各キャラがどんなことを考えていたかがよくわかり、なかなか面白かったです。
ただ、視点は違うといえど、基本的に同じシナリオを何度も読まされる訳で、
さすがに4回目5回目となるとキツかったです……。しかも、スキップは全くと
いっていい程効きませんし。何のための既読スキップなんでしょうね(^^;
このあたり、もう少し配慮が欲しかったですね。まあ、常に主人公の周りに
いるキャラ以外は、シナリオ短めですけど。

あと、1つのシナリオの中でも視点を切り替えられるようになっているのですが、
正直これはあんまり意味を感じませんでした。視点を切り替えなくてもクリアは
出来ますし。CGを回収するためには視点変更は必要ですけど。

そして、私が一番感じたのは、あまりにも事前に抱いていたものと雰囲気が
かけ離れていたこと。爽やかな雰囲気のパッケージや、幻想的な雰囲気の
オープニング、マルチアングル恋愛AVGというジャンルから、もっと恋愛色を
表に出した、ラブラブ萌え萌え出来る作品かと思いきや、人間のドロドロとした
部分を描き、かなりキツいシーンの連続、そして最後もすっきりしない後味の
悪い終わり方など、ことごとく期待を裏切られた感じです。
ですので、プレイするときはそのことは頭に置いておいた方がいいです。
間違っても、学園純愛ラブラブストーリーなんて思い浮かべないように(^^;

まあ、それを考えなければ、心情描写がうまくされていて、ザッピングによって
より深く心理を知ることが出来て、なかなか面白かったです。
ただ、かなり人を選ぶ作品だと思いますので、そこは注意。
人によっては名作たり得る、人によっては駄作とも言える、そんな極端な作品
だと思います。従って、お奨め度は中途半端な値になっています(笑)
私の個人的満足度で言えば、6ぐらいですかねー。ストーリーは良くできている
と思いますし、心情描写はなかなかいいのですが、かなりキツいシーンがあり、
同じシナリオを何度も読まされるのはちょっと苦痛でした。
評価はばっさり割れると思いますので、プレイして確かめてみてください(^^;
# レビューサイトにあるまじき結論(笑)
##最初のシナリオだけで評価した場合、お奨め度 7 ぐらいあげてもいいかも、
##という感じですけどねー。

最後に。潮里エンドきぼー(T_T)
ところで、潮里は自分のことを「いちのせしおり」としか自己紹介していない
のに、主人公や夕凪はどうして「潮里」と呼んでいるのですか。
お前らはエスパーか!(笑)
# まあ、夕凪の場合、何があっても不思議じゃないですが(^^;


んでは、ネタバレ気味の感想。

夕凪の正体、あまりにもバレバレすぎてなんとも(^^;
まあ、シナリオ的にはあーんまり隠そうともしていない感じですけど。
ただ、いくらなんでもその能力は無茶すぎないかい?
もはや技術でなんとかなるレベルではないと思うぞ(^^;

そして、嫉妬に狂った美奈萌、怖すぎ(^^;
大人しい人ほどキレると怖いんですね……。

で、私がこのゲームをプレイしていて思ったのが、「君が望む永遠となんか
似てる」。もちろん、話の内容は全然違いますし、雰囲気も違うんですけど、
どうもこの人間のドロドロした部分の見せ方なんかは、かなり近い物を感じ
ました。美奈萌なんて、主人公を監禁して調教し始めないかとドキドキしま
したよ(笑)
なので、「君が望む永遠」の雰囲気が好きな人には合うかもですね。



ロビーに戻る  レビュートップに戻る