はるのあしおと
ブランド名 minori ジャンル インタラクティブ・ノベル
発売日 2004.07.23 定価 \9,240
パッケージ 紙製パッケージ(230x165x39mm) マニュアル A4用紙2つ折り
DISC容量 6.45GB(DVD-ROM)
SPECIAL DISC : CD-DA+287.4MB=380.9MB、CD-DA2トラック、CD-ROM XA
原画 KIMちー庄名泉石 シナリオ 鏡遊北川晴御影
音声 主人公以外フルボイス、鷹月さくら、桜井美鈴、まきいづみ、白石杏、
松永雪希、神威、ありす、
草柳順子、青山ゆかり、柊みかみ、星川未流来、成瀬未亜
児玉さとみ、紗季夕弥、中澤歩、植木卓郎
インタフェース ややキーボード操作可 描画 Window・フルスクリーン両対応、
800x600
セーブ箇所 90箇所+クイックセーブ10箇所 あり(5曲、OP・ED)
おまけ memories
対象属性 純愛、学園物、感動、ロリ、ストレートロング、リボン、触角、幼馴染み、猫耳、尻尾、
オーバーニーソックス、ウエイトレス、体操服、ブルマ、お兄ちゃん、ショートカット、
眼鏡っ娘、女教師、ツインテール、緑髪、赤髪、青髪、ボブカット、ピンク髪、金髪、
ポニーテール、ヘアバンド
1プレイ時間 6〜7時間 お奨め度 8

レビュー
概要
東京の大学に通い教員免許を取るも、試験に落ちて教員になれなかった主人公。
バイトをしながら毎日をだらだらと過ごしていた主人公は、ある日、大学の仲間で
憧れの女性である白波瀬に呼び出される。そこで彼女は、もうすぐ結婚するという
ことを主人公に告げる。告白もしないままフラレた主人公は、傷心のまま故郷の
芽吹野町に戻る。そこで、アパートを借りて閉じこもって暮らしていたある日、
幼馴染みの悠が主人公を学園祭に連れ出す。しかしそこで、主人公の叔父であり、
悠の父でもある学園の教頭が倒れる。そして、お見舞いに行った主人公に教頭は、
自分が復帰する春まで臨時教師を頼めないかと主人公に声をかける。東京で思い
描いていた夢を思い出した主人公は、このままではいけないと思い、その依頼を
受けることを決心する。果たして主人公は、傷ついた心を癒し、前に向かって
歩いていけるのか……という、インタラクティブノベル。
キャラクター・CG・音声・音楽
キャラクターは以下の通り。

桜乃悠(ゆう)。(CV:鷹月さくら)
主人公の幼馴染みで、教頭の娘。明るく元気いっぱいで無邪気。誰とでもすぐに
うち解けられる。

楓ゆづき(かえでゆづき)。(CV:まきいづみ)
学園祭の時に出会った女の子。大人しく控えめで極度の照れ屋。表情に乏しい。
だが、言う事は結構キツい。天然でさりげない毒舌家。ジャンクフードが大好き。
何を考えているのかわからない不思議少女。

藤倉和(ふじくらなごみ)。(CV:桜井美鈴)
学園祭の時に衝撃的な出会いを果たした少女。その出会いから主人公のことを
毛嫌いし、ことあるごとにつっかかかってくる。クラス委員長で、生真面目で強気に
本気。元気に勇気。勝ち気。言いたい事はずばずば言う。気性が荒くて独占欲が
強い。人類なのか疑わしいぐらい勘がいい(笑)

篠宮智夏(しのみやちか)。(CV:白石杏)
主人公の幼馴染みで、学園の保健医。おっとりほんわかした雰囲気を持った
女性で、主人公によくからかわれる。のんびりマイペースな女性ですが、人の
気持ちを考えられる、優しい人。

絵の方はやや丸みを帯びた、等身の低い幼い印象の絵柄。ぶっちゃけロリ。
みんな揃いも揃って貧乳で、つるぺた好きな人にはよだれものでしょう。
念のために言っておきますが、私は違いますからね。
シーン毎にややバラつきがあり、特に立ち絵は、角度によって全然別人に見え
たりすることもあります。拗ねた時の顔とか、膨れたときの顔なんかは、ちょっと
ヤバいぐらいにバランス崩れてます。かと思えば、照れた時の顔や、涙ぐんで
いる顔なんかはめっちゃくちゃ破壊力がデカかく、非常に魅力的です。
CGは明るい色遣いのはっきりした塗りで、わかりやすいです。ただ、一部かなり
エフェクトをかけたぼやけたような絵もありますけど、まあ意図的にそうしている
のでしょう。ちょっと見づらいですけど。
立ち絵はポーズ変化・表情変化ともにあり。アクションがとても大きく、会話に
合わせてコロコロ変わるので、感情移入もしやすいです。
特に、表情変化はコミカルなものも多く、見ていてとても楽しいです。
さらに、目パチ、口パクあり。立ち絵だけでなく、イベント絵にもありますので、
より一層感情移入がし易いです。どアップになっていても綺麗に口パクするのは
なかなか見応えがあります。他にも、目が点になっていたり、焼き芋を頬張った
状態でも目パチ・口パクするのは、もはや執念すら感じます。
差分を抜いてもかなりの枚数が用意されているんですが、差分も含めて考えると
膨大な量のCGが使用されていて、演出がより効果的になっていると思います。
# 食べ物にモザイクがかかっているのはステキすぎます(笑)

キャラクターは明るく元気いっぱいな悠、大人しく控えめなゆづき、強気で
勝ち気な和、ほんわかした智夏と、はっきりしたわかりやすい配置。
悠と智夏、ゆづきと和がペアになっているためバランスも良く、会話も非常に
楽しいです。さらに、教頭代理のあおい先生が非常にいい味を出しています。
「あたしはこんなキャラじゃない」と落ち込む和らぶりー。
そして、智夏をとっても可愛いと思うのは至極当然の事です。ロリってゆーな。
# つーか可愛すぎ。泣き顔が破壊的です。優しくていい娘ですし。回避不能。

音声は、メインヒロインに関しては、ややマッチングが微妙。悠はかなり無理して
いるように思えますし、和はちょっとやりすぎな気も。個人的には、悠と和は逆の
方が良かったんじゃないかなー、と思ったり。お子様悠は、ちょっと無理あるかも。
演技については特に気になることもなく、思いをぶちまけるところなども臨場感
たっぷりに演じられていてとても良いです。
そして、サブキャラですが、他のゲームでメイン張ってるような声優さんが起用
されており、マッチング・演技とも良好。つーか、豪華すぎ。
このゲームは、誰がどのキャラクターを演じているのかが公開されていないの
ですが、聴けばわかるというレベルの人がいっぱい出ています。サブで。

音楽は綺麗な旋律の落ち着いた雰囲気の曲が多め。他にも、明るく楽しい
曲から、静かで切ない曲まで、幅広く揃っています。どれもクオリティが高く、
単体でも充分聴けるような感じです。
とりあえず、料理シーンで「天国と地獄」を流すのはやめて下さい。なんか、
食べる時ドキドキするから(^^;

ゲームを開始すると、序章の後にオープニングアニメーションが流れます。
歌はポップで爽やかな歌。とても聴き心地がよいです。ただ、途中で激しく
音量が小さくなる部分があって、ちょっとびっくりしました。
絵の方は、とても良く動いており、キャラクターが活き活きとしていますね。
ちょっと絵は粗めな部分もありますが、ある程度は仕方ないでしょう。
絵と歌のマッチングも良く、非常に良くできた、見応えのあるオープニング
だと思います。
そしてこのオープニングですけど、1回クリアしてから改めてみると、歌詞の
内容や絵の作りなど、作品の内容ととても上手くリンクしていて、感心させ
られました。
# 正直、赤い糸はやられた、と思いました。

エンディングも歌あり。さらに、ムービーまで用意されています。
歌は各キャラクターの声優さんが歌っており、歌の方はやや微妙だったりも
しますけど、爽やかでとても聴き心地のいい歌ばかりです。
絵の方も、各キャラクター毎に用意されており、良く動いていて見応えが
あります。一応ラストから続くようなムービーで、エピローグを兼ねている
ような感じなのですが、ちょっと等身が落ちて幼く見えるため、どうしても
その後の話と思えないのはちょっと勿体ないかも。
でも、ゲームのラストを上手く引っ張りストーリーを展開させるムービーで、
とても見応えがあり、見ていて胸が熱くなりました。

さらに、ゲーム中でBGM的に挿入歌が入ったりします。……なんか、やたらと
テンションの高い、騒がしい歌で、すっごい気になるんですけど(^^;
システム
インタフェースはややキーボード操作可。メッセージ送りと選択肢決定はキー
ボードで出来ますが、その他のメニュー操作はキーボードでは出来ません。
いや、メニューを出す事はショートカットで可能なのですが、その内部操作が
キーボードで出来ない、という感じでしょうか。バックログやスキップは、キー
ボードでも可能になっています。
既読スキップ、強制スキップ、バックログ、オートプレイ搭載。
バックログはマウスのホイール機能に対応しており、音声も再生されます。
音声は再生するかしないか設定で切り替えられます。また、バックログは文字
だけでなく、映像も戻ります。シーン自体を戻す感じですね。
通常のメッセージ送りもホイールで可能です。
右クリックでもメニューが出せますが、メッセージウインドウの右下にマウス
カーソルを合わせると、吹き出しのようにメニューが出てきます。
……けっこう邪魔です(^^;

描画はWindow・フルスクリーン両対応。画面サイズは800x600です。
画面が切り替わる時、結構タメがあるんですが、それがちょっと鬱陶しいかも。
まあ、演出なんでしょうけど。スキップ動作は軽快。

セーブ箇所は90箇所+クイックセーブ10箇所。セーブ/ロードは随時可能です。
セーブデータはセーブ日時の他、シーン画像と誰のシナリオか、そして自由
記述のコメントが保存されます。
数としては、選択肢が数えるほどしかなく、エンディングもそれほど多くない
ので、これだけあれば充分でしょう。まず使い切ることはないかと思います。
ぶっちたゃけ、クイックセーブなんて必要性を感じないのですが、まあ別に
あって困るものでもないですしね。

システムは選択肢決定型のアドベンチャー。ただし、選択肢はゲーム全体でも
片手で数えられるほどで、ほとんど誰のシナリオにはいるのかを決めるだけと
いう感じですけど。

ディスクレス起動可。バックグラウンドでの動作はシステムの設定によって
変更可能です。主人公の名前は「桜乃樹」固定です。
シナリオ・プレイ感
ゲームは、教師になれず、恋にも破れた主人公が、故郷の街に帰ってくるところ
から始まります。部屋にこもりっきりなのを見かねた幼馴染みが学園祭に主人公を
連れだし、ひょんな事からそこの臨時教員になる所から、物語が動き始めます。

ゲームは章立てて進むようになっています。

前半は、明るく楽しいコミカルな雰囲気で進みます。各ヒロインとの親交を深め
つつ、一部墓穴を掘りつつ、慣れない教師生活に四苦八苦しながらも、毎日を
過ごしていきます。

そして後半、各ヒロインの抱えた悩みや、主人公自身の思いなどを絡めて、
シリアスで切ない展開になります。

ラストはとても爽やかで、気持ちが晴れ晴れするような終わり方。
エンディングが非常に凝っていることもあって、プレイ後の気分は爽快で、
とても充実した感じです。

特筆すべきは、なんと言っても演出の巧みさ。多彩な表情変化もそうですが、
表情を切り替えるときに何段階かに分けて表示したり、一瞬悩んだ後に扉を
開けるときは絵の方も溜めがあったり、「遠くでチャイムの音が聞こえる」と
言ったらちゃんと効果音が鳴ったりと、とてもリアルで自然な演出がなされて
おり、感情移入度が非常に高いです。

そして、キャラクターの心情描写が非常に巧みで、その時に相手がどんな事を
考えてるいるのかが、テキストだけでなく、絵や音声からも伝わってくるような
感じで、キャラクターがとても活き活きとしています。

残念なのは、ヒロインが基本的にセットになっているため、ゆづきシナリオと
和シナリオは和とゆづきばかりで悠や智夏はほとんど出て来ませんし、逆に、
悠シナリオでは悠と智夏ばかりで和やゆづきは殆ど出てきません。ちょっと
勿体ないですね。
# あおい先生は、どちらでも美味しい所持っていきますが。

あと、主人公が憧れていた女性である白波瀬についての描写がちょっと弱く、
主人公がどのくらい思い入れていたのか、そもそもどんな人なのかが今ひとつ
掴みづらく、ただ引っかき回しているだけの嫌な女に思えたのは残念。
結構いいキャラだと思うので、もう少し活かして欲しかったですね。
# 某エンディングでは、無茶苦茶美味しい所持っていきますけど。

H度はやや高め。各ヒロインとも複数回用意されており、尺もそこそこ長め。
描写も濃いめで、2回戦3回戦なんかもあったりして、純愛物にしてはかなり
頑張っていると思います。しかし、ゆづきだけ圧倒的にシーン数が多いのは、
何か作為的なものを感じます。
ただ、導入が唐突で強引なシーンが見受けられたり、テキストと絵に若干
ズレがある所も見受けられましたけど。
テキストでは口で受け止めてるのに、絵では飛び散っていたりとか。
# 「何もかもどうでもよくなるくらい……たくさんしようね」と言った後、
# 次のシーンが学園というのは酷くないですか(^^; 見せろと。
##病院のシーツを血まみれにするのはまずくないですか?(^^;

テキストは誤字もあまり見あたらず、クセもない読みやすいテキストだと思います。
ただ、たまに全画面表示になったり、テキストが出ずに音声だけで進んだりする
ところがあって、ちょっと馴染みにくかったです。
あと、雪が降る時などに、エフェクトでテキストが崩れることもありました。
プレイ時間・難易度
ゲーム期間は約半年。ただし、イベントのあるところだけをプレイするような
感じで、後半なんて気持ちいいぐらい日付が飛びます。
あ、エピローグまで含めれば、数年のスパンになりますけど。

ワンプレイは6〜7時間。やや長く感じましたが、だれることもなく、最後まで
楽しんでプレイできました。

難易度は低め。というか、選択肢2つしか出てこなかったりしますから、もはや
どこで悩めっちゅーねん、という感じです。
ただ、シナリオ発生に条件のあるキャラがいますので、そのシナリオだけは
入るのにちょっと手こずるかも知れませんが。
総評
お奨め度ですが、ストレートな青春純愛人間ドラマの好きな人にお奨め。
教師になれず恋にも破れどん底まで落ち込んだ主人公が、なんとか立ち直り、
守りたい人を見つけて、また教師を目指して進んでいくという、成長していく
過程がとても巧みに描かれています。また、ヒロイン達も、主人公と触れ合う
中で、自分の抱えているものや気持ちに気付き、壁にぶつかりながらもそれを
乗り越えていく様が良く描かれていて、とても見応えがあります。
奇跡も魔法も猫耳も陵辱も触手も輪姦も調教もスカトロも何もない、100%ごく
普通の青春純愛人間ドラマなんですけど、安心してプレイ出来ますし、とても
落ち着いたいい雰囲気で、気持ちよくプレイ出来ました。
H度も思ったより高かったですし。
# あ、属性で「猫耳」がありますけど、学園祭でのコスプレですので。

ホントに何の捻りも小細工も仕掛けもない、純粋で真っ直ぐな純愛物、成長劇
ですので、大きな盛り上がりはなく、やや淡々と進む印象はあるんですけど、
切なくて、胸を締め付けられるような純愛ラブストーリーで、プレイしていて心地
よかったです。
気持ちを確かめ合い、すれ違い、依存し、お互いの立ち位置を見失いながらも、
最後にはやるべき事を見つけ出すという、心の成長を描いたとてもいい話でした。
ごく普通の、何処にでもあるようなリアルな話で、先の展開は読めまくり、しかも
どのシナリオもラストは似たような展開になるのでバリエーションもそれほど豊か
ではないんですけど、わかっていても面白い、読めていても引き込まれる、それ
だけの力を持った作品でした。

とても丁寧に作られていて、演出には目を見張るものがありますし、切なくて、
苦しくて、でもどこか温かい、不器用すぎてもどかしい青春ドラマですので、
正面切った純愛・人間ドラマが苦手でない人は、是非プレイして欲しいです。
逆に、純愛物とか、人間ドラマが苦手な人には、全くもって向かない作品です
ので華麗にスルーしてください。そういう人にとっては、酷く退屈で、面白みの
ない作品だと思いますし。
お奨め度は 8 にしていますけど、個人的な満足度で言えば 9 を付けてもいい
かと思いましたし、純愛・青春物が好きな人なら、お奨め度 9 にしても全く問題
ないぐらい、ホントに良くできた人間ドラマだと思います。ちょっと幼い絵柄を
許容出来ないと辛いでしょうけど。
もうあと一押しあれば、文句なくお奨め度 9 を付けたんですけどねー。結局、
だくだく泣けたのはゆづきシナリオだけでしたし。でも、充分に良作だとは思い
ます。突飛な設定や派手な展開なしに、ここまで描けるのは凄いです。
ブラボー。掛け値なしに面白かったです。ビバ! 良作!!
# 汚れた大人は、この作品をプレイしてピュアな気持ちを取り戻しましょう(笑)

最後に。まあ、ぶっちゃけた話、女にフラれた主人公が立ち直っていくだけの
話なんですけどね。←身も蓋もない(^^;
# いや、ヒロインのストーリーとかもあるんですけどね(^^;
##最初に主人公が勇気を出していたら、5分でゲーム終わってたよね(笑)


和あたりが、いつ「とんだ茶番ですね」と言うかドキドキしました(笑)

しかし、智夏エンドがあるあたり、minoriさんわかってるねぇ、という感じ。
どうせだったら、あおいエンドもあればもっと嬉しかったんですが、それは
贅沢ですかねぇ。
# 智夏シナリオ、すっごい良かったですし、ね。ゆづきシナリオと双璧。



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