僕は天使じゃないよ
ブランド名 130cm ジャンル 懐古調SMノベル
発売日 2005.04.28 定価 \6,800
パッケージ 紙製パッケージ(163x238x36mm) マニュアル A5ブックサイズ
DISC容量 1.02GB(DVD-ROM)
原画 さっぽろももこ シナリオ うつろあくた
音楽 29曲、BIGたあぼう、さっぽろももこ なし
音声 あり、朝咲そよ、田中美智、涼森ちさと、森川陽子、佐々木あかり
インタフェース フルキーボードサポート 描画 Window・フルスクリーン両対応、
800x600
セーブ箇所 32箇所 CG枚数 70枚
おまけ 画像鑑賞、音楽鑑賞
対象属性 SM、陵辱、時代物、黒髪、ストレートロング、シスター、ツインテール、メイド、盲目、
着物、和服、金髪
1プレイ時間 約1時間 お奨め度 3

レビュー
概要
金持ちの息子である主人公は、メイドとともに家を飛び出し、文筆を行って
日々を過ごしていた。そんなある日、主人公の元に1通の手紙が届く。それは
秘密の倶楽部『マスカレヱド』への招待状だった。そこで主人公は、柘榴と
出会う。その一方で主人公は、孤児院に出資し、そこで働くシスター・百合乃と
文通を行っていた。百合乃からの手紙は徐々に悩みの相談となっていき、
百合乃の隠された性が浮き彫りになってくる。2重生活を送る主人公の、
行き着く先はどこなのか……という、懐古調SMノベル。
キャラクター・CG・音声・音楽
キャラクターは以下の通り。

丘百合乃(おかゆりの)。(CV:朝咲そよ)
孤児院で働くシスター。清楚で大人しい少女。新聞などで「孤児院のマリア」
として取り上げられたこともある。大人しく、控えめ。
孤児院に出資した主人公を「おじさま」と慕っている。

田辺小梅(たなべこうめ)。(CV:佐々木あかり)
主人公に仕えるメイド。主人公と共に家を追い出された、盲目の少女。
主人公に仕えることに喜びを感じる、一途で健気な女の子。

柘榴(ざくろ)。(CV:田中美智)
マスカレヱドで出会った少女。痛みのみを感じることの出来る体質で、どんな
酷い責めでも甘んじて受ける。無口でクールな女の子。

芳野翠子(よしのみどりこ)。(CV:涼森ちさと)
マスカレヱドで出会った女性。パトロンを持ち、裕福な暮らしをしている。
主人公の才能を見いだし、自宅へと誘う。

ローザ。(CV:森川陽子)
翠子が連れてきた少女。可憐な容姿とは裏腹に、生粋のサディストで、どんな
酷いことでも平然とやってのける悪魔のような女の子。

絵の方は独特の雰囲気を持った、可愛らしい絵柄。
CGはやや暗い色遣いで退廃的な雰囲気を醸し出していると思うのですが、
背景がモノクロの落ち着いた色調なのに対して、キャラ絵やイベント絵が
やたら色鮮やかなので、非常に浮いた印象を受けます。
立ち絵はポーズ変化はなし、表情変化はあり。それほどパターンは多くなく、
コロコロと切り替わる感じではありません。

キャラクターは基本的にみんなどこか黒いところを持っており、活き活きと
している感じではありません。むしろ、やる気のなさや、暗さが表に出て来て
いるような感じです。
小梅LOVE。とっても一途で健気でええ娘や(T_T)

音声はキャラクターとのマッチングも良く、演技の方も問題なし。
感情が昂ぶったときの演技も迫力満点で、緊迫感があり、鬼気迫るような
雰囲気すら醸し出してくれます。

音楽は独特の雰囲気を持った、静かでもの悲しい雰囲気の曲が多め。
切ない雰囲気の漂う曲が多めです。

ゲームを開始すると、短いプロローグの後にオープニングアニメーションが
流れます。
歌はなし。ノスタルジックな雰囲気の曲をバックに、作品紹介的な感じの絵が
流れます。ストーリー紹介やキャラクター紹介も独特の文体になっていて、
とても雰囲気が良く出ていると思います。モノクロの絵もなかなか雰囲気が
出ていていいですね。
ただ、古い映画のような感じを出すためか、画面が不規則に明滅したり、かなり
ノイズを乗せてあったりするのですが、おかげで映像が非常に見辛く、ずっと
見ていると目がちかちかしてきます。ちょっと演出としてはやり過ぎなんじゃ
ないかなーと思いました。
システム
インタフェースはマウスカーソルのキーボードエミュレーションによりフル
キーボードサポート。
強制スキップ、バックログ、オートモード搭載。
バックログはマウスのホイール機能に対応しています。
メッセージは全画面表示のビジュアルノベルタイプです。

描画はWindow・フルスクリーン両対応。画面サイズは800x600。
動作は比較的軽快。スキップ動作も高速です。

セーブ箇所は32箇所。セーブ/ロードは随時可能です。
セーブデータはセーブ日時の他、シーンタイトルが保存されます。
数としては、後述する物語分岐図で、好きなシーンから開始することが出来る
ため、ほとんどセーブ/ロードは必要ないかと思われます。
ただ、この作品にはシーン回想がないため、お気に入りのシーンをすぐに見る
ためにセーブを使うことになるでしょうか。そう考えると、ちょっと足りないかも
知れませんね。
ただ、物語分岐図で各シーンの最初からは始められますから、それほど問題は
ないようにも思えます。

システムは選択肢決定型のアドベンチャー。クリアする度にルートが追加
される、選択肢追加型のシステムになっています。
特徴としては、「物語分岐図(地図)」でしょうか。既に見たシナリオの分岐が
ツリー構造で表現され、好きなシーンの頭から開始することが出来ます。

ディスクレス起動可。バックグラウンドでの動作は可能です。
主人公の名前は「北見市蔵(きたみいちぞう)」固定です。
シナリオ・プレイ感
ゲームは主人公がマスカレヱドに招待され、柘榴と出会う所から始まります。
マスカレヱドに通い柘榴と逢いつつ、孤児院の百合乃と正体を隠して文通を
するという、2重生活を送っていきます。

ゲームは全体的に重苦しく、淡々と進みます。
退廃的な、ダークな雰囲気が漂っています。

「小梅、慌てて出て行く」「暦を見る市蔵」など、三人称かつ独特の語り口で、
一風変わった雰囲気を醸し出しています。

また、「(よろめいて)わ、わ、わわ……」とか「(寂しそうに)そ、そうですか……」
といった、仕草もセリフの中に組み込むという手法が使われていて、これも
独特の雰囲気を作り上げています。

ただ、シーン1つ1つが非常に短く、また繋がりも弱いため、ストーリーがあまり
頭に入ってきません。
「家に来ないか」と誘われて、次のシーンはその家で過ごして数日経っており、
そろそろ家から出たいと思っていたりなど、話がかなりとびとびで、ついていく
のが大変でした。
他にも、主人公の呼び方が「北見さん」から突然「市蔵さん」に変わったりする
こともあるのですが、その間に何があったのか描かれておらず、頭の中で話を
想像して繋げる必要があるなど、何も考えずにプレイすることが出来ない、
素直には楽しめない作品になっているように感じました。
描かれていない部分を想像する、いわゆる「行間を読む」能力が、かなり必要と
される作品だと思います。

ただ、決してストーリーの構成が適当というわけでなく、よく読んでみると、
ベースの設定は結構しっかりと考えられていて、最後の最後で「あの描写は
そういうことだったのか」と気付かせられることもあり、基本は丁寧に作られて
いると思います。

また、ラストはあっけなく終わるものが多く、しかも殆どが身も蓋もないような
ダークな終わり方ですので、プレイ後はとてもにブルーになれます。
みんな幸せになってハッピーエンド、なんてものはなく、まるで滅びに向かって
突き進んでいくような、シュールな展開が揃っています。
ただ、キャラクター達は、それでも幸せな雰囲気を漂わせてはいるのですが、
なかなか理解するのは大変かと。

H度は低め。各ヒロインとも複数回用意されていますが、尺は非常に短く、また
内容もかなり端折られていたりと、かなり物足りなさがありました。
また、シーンの多くはマスカレヱドや妄想でヒロインを痛めつけるシーンで、
純粋なHシーンは数えるほどしかありません。それすらも、前戯なんか端折って
いきなり挿入、しかも三こすり半という状態のため、はっきり言ってHシーンは
ほとんど楽しめないかと思います。シーン回想すらないですし。
さらに、陵辱や寝取られ(寝取らせ)などもあり、苦手な人には厳しい内容に
なっていると思います。

テキストは、誤字はほとんど目に付きませんが、『」』が行頭に来ていることが
結構多く、ちょっと気になりました。また、文体自体が独特なため、かなり人を
選ぶかと思います。
プレイ時間・難易度
物語は章立てて進みます。
ゲーム期間は不明。日付の表示はなく、平然と数日から数ヶ月経っていることも
あるため、気にする必要はないでしょう。

ワンプレイは約1時間。ただしこれは、最初から始めて、初期状態でクリア出来る
エンディングまでの時間なので、それ以降、分岐の途中から始めた場合は、10分
から30分程度で終わるかと思います。

難易度は低め。物語分岐図で分岐は全て判りますし、新しくルートが追加された
時も、どこが追加されたのか判るようになっていますので、悩むことはないかと
思います。
総評
お奨め度ですが、ひたすら退廃的でダウナー系な、古めかしい雰囲気の作品が
好きな人にお奨め。
大正末期から昭和初期の雰囲気はとても良く出ており、キャラクター達も独特で、
雰囲気にはどっぷりと浸ることが出来るかと思います。

ただし、イベントはとびとびで、油断しているとすぐ話の繋がりがわからなく
なってしまいかねないため、雰囲気に浸っているとストーリーがわからなくなる
可能性があるので注意が必要です。

また、シーンの1つ1つが非常に短く、会話もまるで単語のみで会話している
ような状態ですので、感情移入など出来るはずもなく、ゲームの世界にはなか
なか入り込みづらいです。
元々、第三者視点の三人称描写が中心のため、一歩引いた状態でプレイする
ように出来ているとは思いますが。

そして、この作品は「懐古調SMノベル」ということで、倒錯したSM描写がどんな
ものかと期待していたのですが……なんですか。このめちゃめちゃ端折ったSM
描写は。吊しました。鞭打ちました。気絶しました。そんな散文的な描写が多く、
全然雰囲気が伝わってきませんでした。
SMの内容も、それほどキツいものではなく、SMに期待した人は、肩すかしを
食らうことは間違いないと思います。

さらに、全体のボリュームもやや乏しく、定価は安めに設定されているものの、
物足りなさは拭えません。

退廃的な雰囲気はとても良いのですが、シーンが短く、またシーンとシーンの
繋がりも弱いので理解しがたく、Hシーンすら端折った状態で、さらにラストは
もれなくダークな終わり方という、非常にプレイする人を選ぶ作品だと思います。
プレイするには、言葉少ないシーンを理解し、また描写されていないシーンと
シーンの間を理解する行間を読む能力と、陵辱や寝取られに対する耐性、
そして救いのないダークなエンディングを楽しめる心が必要で、いくらなんでも
プレイする人を選びすぎだろう、という感じですね。
ともすれば、非常に電波なシナリオで全然理解できない、人によっては簡単に
地雷と言い切ってしまえそうな作品なので、お奨めはし辛いです。
多くの人は「なんだこれ?」「わけわからん」という感想を持ちそうな気がしますし。
ただ、この雰囲気がツボに入った人なら、かなり楽しめるかと思います。
ラストは確かに救いがないですが、キャラクターは幸せそうですから、ある意味
ハッピーエンドなのかも知れませんし。

最後に。えーっと、これってマスカレードですよね? 仮面つけてるんですよね?
何を平然と自己紹介してんスか。てゆーか、あっさり知り合いに見つかってるし(^^;


以下、ちょっとネタバレな感想。まあ、見ても大丈夫かと思いますが。


小梅が盲目であるという設定、プレイしていると疑問点がいくつも浮かんで
来たのですが、最後の最後で疑問が氷解したのは気持ちよかったです。
ただ、そうすると、あのHシーンが非常に悲しく切ないのですが……。
ぶっちゃけ、この設定がなかったら、お奨め度2にするつもりでした(笑)
でも、小梅には幸せになって欲しいのですよ……(T_T)



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