いつか、届く、あの空に。
ブランド名 Lump of Sugar ジャンル ノベル式天体観測シネマ
発売日 2007.01.26 定価 \8,800
パッケージ 紙製パッケージ(163x230x38mm) マニュアル A5ブックタイプ
DISC容量 GAME DISC : 1.79GB(DVD-ROM)
初回特典オーディオCD : CD-DA+25.5MB=281.8MB、CD-DA7トラック
原画 萌木原ふみたけ シナリオ 朱門優
音楽 33曲、大川茂伸、末廣健一郎 あり(3曲、OP・ED)、霜月はるか
榊原ゆい、Kicco
音声 あり、遠井実瑠、風華、北都南、
中瀬ひな、安玖深音、韮井叶、水鏡、犬野忠輔、間寺司、山田悠、大花どん
インタフェース ややキーボード操作可 描画 Window・フルスクリーン両対応、
800x600
セーブ箇所 100箇所 CG枚数 98枚
おまけ ビジュアルモード、サウンドモード
対象属性 伝奇物、ミステリー、幼なじみ、ボブカット、リボン、金髪、ツインテール、しましま、
オーバーニーソックス、黒髪、着物、和服、お嬢様、ストレートロング、ストッキング、
ポニーテール、帽子、先輩、ゴスロリ
1プレイ時間 11〜14時間 お奨め度 5

レビュー
概要
芸術の才能に秀でた巽家にあって、ただ一人才能を開花させられなかった
主人公。ある日、分家のある街に巽家の者が誰か1人行かなければならない
という話があり、巽家での居場所を失っていた主人公は立候補する。
そしてやってきた空明市は、夜になると雲が空を覆う星の見えない街だった。
そこで待っていたのは、主人公のヨメだと名乗る女の子。こうして主人公の
新しい生活は始まった。果たして主人公は、この街で何を見、何を知るのか
……という、ノベル式天体観測シネマ。
キャラクター・CG・音声・音楽
キャラクターは以下の通り。

唯井ふたみ(いいふたみ)。(CV:遠井実瑠)
主人公が空明市で暮らす屋敷にいた女の子。自称・主人公のヨメ。
クールで無表情で思い込みの激しい娘だが、とても優しく思いやりのあるいい娘。
ただ、口べたで、事実しか言わないため、かなりキツく受け止められることも。
主人公のことを「お主人ちゃん」と呼ぶ。……どういうプレイですか、それわ。
世間ズレしていて、「ヨメ」に対してもいろいろな勘違いをしている。
# 「ヨメというのは無休無給で一生こき使われる家政婦の総称だぞ?」(^^;
##紙切れ一枚で消えてなくなる終身雇用(笑)

未寅愛々々(みとらめめめ)。(CV:中瀬ひな)
ふたみのことをお姉様と慕い、いつも一緒にいる女の子。
主人公に会って早々殺害宣言をする(笑)
武闘派で、笑顔で主人公をボコりまくる(^^;

桜守姫此芽(おうすきこのめ)。(CV:風華)
空明市で唯井家と並び力を持つ桜守姫家のお嬢様で、ふたみの友達。ただし、
ふたみと喋っているといつの間にか口論のようになる不思議な間柄。
古風な話し方をし、おしとやかで控えめで優しい大和撫子。
力があり、頭もいいが、そのために相手を見下したりはしない。

透舞のん(とおりまいのん)。(CV:安玖深音)
此芽をお姉様と慕い、崇拝する取り巻き。気が強くツンツンしており、此芽の
ことをバカにされると烈火のごとく怒るが、根は優しいいい娘。

明日宿傘(あすくさん)。(CV:北都南)
ふたみがお姉さんと慕う上級生。いたずら好きでつかみ所のない不思議な女性。
主人公に対しても、思わせぶりな態度を取る。

桜守姫みどの(おうすきみどの)。(CV:韮井叶)
此芽の妹。人見知りでいつもおどおどしている。

絵の方はとても可愛らしく活き活きしていて、また各キャラの特徴がはっきり
していてわかりやすい、とても見やすい絵ですね。表情も豊かで構図も動きが
あって素晴らしいです。
CGは綺麗に丁寧に処理されており、メリハリもあって見やすいです。
立ち絵はポーズ変化・表情変化ともにあり。アクションは大きく、とても活き活き
していて、感情もよく伝わってきていいですね。

キャラクターは一癖も二癖もあるキャラ揃い。基本的に世間ズレしたキャラや
気の強いキャラがやたら多いです。また、キャラクターの名前からして、非常に
特徴的・個性的ですね。
此芽がすんごい可愛らしくていいですね。愛々々も色んな意味でステキです(笑)

音声はキャラクターとのマッチングも良く、演技の方も問題なし。
愛々々は最初、ちょっとハスキーすぎるかな? 合ってないかな? と思ったの
ですが、プレイしていると結構馴染んできました。元々、第一印象と中身が
かなり違うキャラですしね。
そして、菊乃丸のぼそぼそとぼやくように早口で切れ目なく話す演技は、
すっごい雰囲気が出ていて良かったです。
ただ、キャラによっては、「ああ?」とか「読んでた」とか、ちょっとイントネー
ションが違うと感じることはありました。

音楽は静かで落ち着いた曲が多め。後半になると激しい曲が増えてきますが。
澄んだ音色と広がりのある音楽で、なかなかクオリティは高いと思います。

ゲームを開始すると、プロローグの後にオープニングアニメーションが流れます。
歌は流れるような爽やかな歌。ちょっとハイトーンで聴いていて苦しくなるような
感がありましたが。
絵の方はキャラクター紹介・シーン紹介的なもの。特筆すべき点は特になし。

そして中盤、第二部に入るところでセカンドオープニングが流れます。
歌は切なさが漂う、それでいて力強い歌。なかなか格好いいですね。
絵の方はキャラクター紹介・シーン紹介的なものなんですが、より核心に迫る
シーンが使われていて、なかなか見応えがあります。

エンディングも歌あり。歌はしっとりとした落ち着いた歌で、心に染み入って
来るような感じの、余韻の残るいい歌ですね。静かでありながら力強い歌声も
なかなか聴き応えがあります。
システム
インタフェースはややキーボード操作可。メッセージ送りや選択肢決定はキー
ボードで可能ですが、メニュー内部の操作等は出来ないようです。
既読スキップ、強制スキップ、バックログ、オートモード搭載。
バックログはマウスのホイール機能に対応しており、音声の再生も可能です。
通常のメッセージ送りもホイールで可能です。
前の選択肢に戻る機能も付いています。まず使わない気がしますが。

描画はWindow・フルスクリーン両対応。画面サイズは800x600です。
動作は比較的軽快。スキップ動作はそこそこ高速です。
メッセージ全画面表示のビジュアルノベルタイプです。

セーブ箇所は100箇所。セーブ/ロードは随時可能です。
セーブデータはセーブ日時の他、ゲーム内日付とシーン画像、自由記述の
コメント(初期値はメッセージの一部)が保存されます。
数としては、選択肢が片手で数えられるほどしかないので、これだけあれば
充分すぎるでしょう。まず使い切ることはないかと。

システムは選択肢決定型のアドベンチャー。というか、選択肢は数えるほど
しかなく、ほとんどテキストを読み進めるだけのノベルです。
条件を満たすとシナリオが追加される、選択肢追加型のシステムになって
いるようです。

ディスクレス起動可。バックグラウンドでの動作も可能です。
主人公の名前は「巽策(たつみさく)」固定です。
シナリオ・プレイ感
ゲームは主人公が空明市にやってくるところから始まります。
そこで自称ヨメのふたみと出会い、新しい生活を始めていくうちに、主人公が
この街に来た意味や、この街の謎に触れていく……という感じ。

前半はちょっとコミカルで真っ直ぐな展開。ふたみにヨメとして迫られたり、
愛々々にボコられたり、透舞に突っかかられたり、傘にからかわれたりしつつ、
雲を払う「照陽菜」と呼ばれる儀式を行っていきます。

後半は、空明市の生い立ちや謎などを絡めた、シリアスで伝奇要素の入った
シナリオが展開されます。
過去の歴史や主人公の生い立ちなど、いろんな設定が複雑に絡み合っていく、
ちょっと解りづらい唐突な展開が目立ちます。

ラストはやや強引でご都合主義な嫌いはありますが、とりあえずは綺麗に
締めてくれます。ただ、手放しでハッピーエンドという感じではないですが。

まずプレイしていて気になったのが、シーンとシーンの間の繋ぎ。
シーンの切れ目で話がぽんっと飛ぶことが多く、ちょっとついていくのが大変な
ことが多々。
また、シーンが変わるとキャラクターの状況とか考え方も変わっているようで、
今までツンツンしていたキャラがいきなり親しげになったり、逆に今まで慕って
くれていたキャラが冷たくしようとしたり、意味が分かりません。
さらに、やや整合性も怪しくて、何度も透舞から桜守姫は乙女座だって聞いて
いたにも関わらずまた確認したりとか、ゴミが皆無だって言ってたクセに吸い殻
以外のゴミはあるとか。
てか、雨が降った直後に、断水して雲を発生させないようにしても、色々無理が
あると思うんですけど(^^;
# 朝、あれだけボコボコにされたハズなのに、平然と学校に行って、しかも
# 誰からも何も言われないのは凄いと思う(^^;

他にも、情報の出し方や、順序、主人公の考え方なんかがどうもちぐはぐに感じ
ました。たとえば携帯がどこに行っても圏外なので携帯が壊れたとか言い出し
ますが、まずその前にまわりの人に聞けよと。
街から誰も出た事がないという設定も、普通に考えたらおかしいだろうと。
# まあ、このあたりは気付かない理由もあったりはするんですけど……。

とにもかくにも、あちこちに矛盾や不整合が潜んでいて、どうにもプレイして
いて気持ち悪かったです。

H度は低め。各ヒロイン1回。いまどき珍しいかも。尺の方はそこそこ長めですが、
描写はかなりライトです。
内容は純愛系のノーマルなもので、どちらかというと気持ちを確かめ合うような、
ストーリーの中で自然に組み込まれたシーンになっており、Hシーンとして独立して
いるような感じではありません。シーン中の会話も多いですし。
まあ、これはこれでありかな、と。
ただ、サブキャラにいたってはHシーンなしなのはちょっと寂しいですね。
愛々々とかのんあたりはかなり魅力的なんですけど。

テキストは誤字等はあまり気になりませんでしたが、先述の通りどうにもちぐはぐ
な所が気になったり、各ヒロイン、特にふたみの口調が、敬語・丁寧語・ため口が
入り乱れたりなど統一感がなく、やや馴染みづらかったです。
プレイ時間・難易度
ゲームは5月16日火曜日から始まります。
ゲーム期間は1ヶ月半+α。基本的に1日ずつ進めていきますが、後半は結構
飛んだりします。

ワンプレイは11〜14時間。結構長いですが、半分ぐらいは共通部分なので
2周目以降はスキップを使えばかなり短縮できますし、そもそもエンディングの
数がそんなに多くないので、トータルで見ればそーんなに長いわけでもないです。
まあ、それなりの時間はかかりますけど。

難易度は低め。選択肢は片手で数えられる程度なので、それほど苦労することも
ないかと思います。ただし、一部クリア順制御がかかっていますので、その点は
注意が必要です。
総評
お奨め度ですが、いろんな設定が絡み合う、複雑でシリアスで突拍子もない
伝奇物が好きな人にお奨め。
様々な謎が秘められていて、それを徐々に紐解いていくようなストーリーは
なかなか興味深く、最後まで飽きることなくプレイできると思います。

ただ、シーンの繋ぎが弱かったり、整合性が怪しかったり、さらに言い回しが
やたら小難しかったり回りくどかったりと、どうにもストーリーに集中しづらく
解りづらくなっているように思えます。
ストーリー自体は比較的シンプルで、後から考えてみれば結構解りやすかったり
するのですが、言い回しや表現のせいで、プレイしているときにはどうにも解り
づらく難解に感じてしまうのは非常に勿体ないと思います。
かなりぶっ飛んだ設定が何の前触れもなく出てきたり、そもそも最初の設定から
してかなり不条理なのにそれが当たり前のように話が進んだり、突拍子もない
展開が連続する、一見してかなりの超展開で、置いてけぼりを喰らうことも。
もう少しシーンとシーンの繋がりを丁寧にして、設定の出し方をもう少し考え
れば、かなりいい作品になったんじゃないかと思えるだけに残念です。
理解は出来るけど意味がわからない、という感じでしょうか。

ともあれ、お話自体は結構面白いので、難解なシナリオでも気にならない人は
是非どうぞ。Hシーン重視な人には辛いでしょうけど。

最後に。「何か不満に感じる事があったら、すぐに言ってくれ。殴るから」
……それは何の解決にもなっていないのでわ……(^^;


いくらなんでもあの「解対」はやり過ぎというか、無理がありすぎる気がするの
ですが……(^^;
てゆーか、やたらスケールデカいくせに狼弱いなおい(笑)

ところで、後半は天体観測シネマでもなんでもなくなっている気が……。
此芽や傘シナリオにいたっては、主人公なーんにもしてない(^^;



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