殻ノ少女
ブランド名 Innocent Grey ジャンル サイコミステリィAVG
発売日 2008.07.04 定価 \8,800
パッケージ 紙製パッケージ(132x148x16mm) マニュアル ブックレット
DISC容量 4.14GB(DVD-ROM)、StarForce
原画 杉菜水姫 シナリオ 鈴鹿美弥
音楽 26曲、Little Wing、まにょっ あり(1曲、テーマ曲)、霜月はるか
音声 あり、あじ秋刀魚、吉田美海、日向葵、かわしまりの、柚木かなめ、雅姫乃、一色ヒカル、
秋城柚月、葉村夏緒、香澄りょう、草村ケイ、機知通、馬並硬太、広野大地、Back麗男、
胸肩腎、八神大輔、原田友貴、滝沢アツヤ、倉田まりや、金田まひる、青木史生、
木口貴弘、シンシアリーのお姉さん
インタフェース メッセージ送りのみキーボード可 描画 Window・フルスクリーン両対応、
800x600
セーブ箇所 60箇所 CG枚数 101枚
おまけ CGGALLERY、SCENEGALLERY、MUSICGALLERY
対象属性 推理物、ミステリー、サスペンス、黒髪、リボン、未亡人、妹、和服、着物、ストレートング、
オーバーニーソックス、眼鏡っ娘、白衣、女教師、ボブカット、金髪、帽子
1プレイ時間 5〜14時間 お奨め度 7

レビュー
概要
探偵をやっている主人公は、ある日、不思議な少女から「本当の私を捜して
欲しい」と依頼を受ける。その時、連続殺人事件の調査を受けていた主人公は、
その少女が通う学園に潜入捜査することになる。果たして主人公は、事件を
解決し、依頼をこなすことが出来るのか……という、サイコミステリィAVG。

なお、本作は舞台が昭和31年の東京で、前々作である「カルタグラ」と同じに
なっており、登場人物も一部登場しています。
キャラクター・CG・音声・音楽
キャラクターは以下の通り。

葉月杏子(はづききょうこ)。(CV:柚木かなめ)
喫茶・月世界の店長。主人公の昔馴染み。優しく人当たりもいいお姉さん。
整理整頓が苦手。

時坂紫(ときさかゆかり)。(CV:かわしまりの)
主人公の妹。しっかりもので、家事を一手に引き受ける。大人しく物静か。
虫が大好き。櫻羽女学院に通う。

朽木冬子(くちきとうこ)。(CV:あじ秋刀魚)
主人公に「本当の私を捜して」と依頼してきた少女。少年のような口調で
話す。不思議な雰囲気のつかみ所のない女の子。櫻羽女学院に通う。

雨宮初音(あめみやはつね)。(CV:雅姫乃)
喫茶・月世界で働く女の子。明るく元気で頑張り屋さん。でもちょっとドジ。
遊郭「雪白」で下働きをしていた。「カルタグラ」のヒロインの一人。

高城夏目(たかしろなつめ)。(CV:一色ヒカル)
高田馬場で小さな病院を営み、解剖医もやっている。奔放で傍若無人な女性。
常識やデリカシーという言葉を丸めて捨てる。アメリカ訛りの京言葉を話す(笑)

高城和菜(たかしろかずな)。(CV:秋城柚月)
旧姓・上月和菜。カルタグラのヒロインの一人。カルタグラの主人公であり、
本作主人公の友人でもある高城秋五と結婚している。
明るく親しみやすい女性。

月島織姫(つきしまおりひめ)。(CV:かわしまりの)
櫻羽女学院の生徒会長。凜とした雰囲気の女性。生徒からの人気も高い。
家は屈指の大金持ちのお嬢様。

朱崎寧々(あかざきねね)。(CV:葉村夏緒)
櫻羽女学院の養護教諭。潜入捜査をする主人公のサポートを任される。
親しみやすく気のいい女性。

水原透子(みずはらとうこ)。(CV:吉田美海)
櫻羽女学院の学生で、冬子の友達。冬子のことを慕っており、他の人には
全く興味がない。冬子に近づく主人公に敵意を抱く。

四十宮綴子(よそみやつづりこ)。(CV:日向葵)
櫻羽女学院の学生で、紫の友達。通称・トジ子。底抜けに明るい女の子。
小説を出版している。

佐東歩(さとうあゆむ)。(CV:柚木かなめ)
櫻羽女学院の学生で、事件被害者の友達。剣道部。物静かで大人しいが、
ややキツく警戒心も強い。

朽木千鶴(くちきちづる)。(CV:葉村夏緒)
冬子の母親。くたびれた雰囲気の覇気のない女性。

山ノ内小春(やまのうちこはる)。(CV:香澄りょう)
朽木病理学研究所の産科で働く医者。真面目で優しいいいお医者さん。

マリス・ステラ。(CV:秋城柚月)
美術館で働いている女の子。日本語がややたどたどしいが、美術にまつわる
ことについては流暢にすらすらと話す。人の名前を覚えるのが苦手。

水原未央(みずはらみお)。(CV:草村ケイ)
透子の母親。女手一つで透子を育てており、顔料を作って生計を立てている。

絵の方はすっきりした落ち着いた絵柄で、とても雰囲気があって艶っぽいです。
CGは落ち着いた色遣いで丁寧に処理されており、とてもよく雰囲気が出ていると
思います。
立ち絵はポーズ変化・表情変化共にあり。基本的に落ち着いた感じで、派手な
変化はありませんが、たまにコミカルな表情や演出が入ります。

キャラクターは落ち着いた大人しいキャラが多め。くたびれた雰囲気のキャラも
多く、どうにも覇気がありません。会話もどうにも重い感じです。
そんな中、綴子、初音、和菜はオアシスです。
そして、夜月くんはなんか色々可哀想です(笑)
# 夏目さんはいろいろやりすぎです(^^;

音声はキャラクターとのマッチングは良く、演技の方も問題なし。
基本的に落ち着いた感じの演技が多いんですが、夏目さんや綴子の弾けた演技
なんかはなかなか楽しいです。
また、兼ね役をやっている人がかなり多いんですが、全く気にならず、むしろ
言われなければ気付かないぐらいでした。

音楽は静かで落ち着いた雰囲気の曲が多め。作品をしっとりと包んでくれる
ような感じです。ほのぼのとした曲や、緊迫感のある曲なども用意されていて、
シーンを盛り上げてくれます。
ただ、途中で金属質な機械音が入る曲があり、それがやけに耳障りでした。
システム
インタフェースはややキーボード操作可。メッセージ送りや選択肢決定は
キーボードで可能ですが、それ以外の操作はほとんどできないようです。
既読スキップ、強制スキップ、バックログ、オートモード搭載。
バックログはマウスのホイール機能に対応しており、音声の再生も可能です。
通常のメッセージ送りもホイールで可能、音声のリピート再生も可能です。

描画はWindow・フルスクリーン両対応。画面サイズは800x600です。
動作はそこそこ軽快。スキップ動作もそこそこ高速です。

セーブ箇所は60箇所。セーブ/ロードは随時可能です。
セーブデータはセーブ日時の他、シーン画像とシーン名、メッセージの一部が
保存されます。
数としては、選択肢や場所移動、推理パートなどがかなり多く、全ての場所で
セーブしているとあっという間になくなります。
もう少しあった方が便利かも。

システムはマップ移動場所選択+選択肢決定型のアドベンチャー。
マップ移動は場所しか示されず、そこに誰がいるか、イベントが起こるのかは
わからないようになっています。
また、通常のアドベンチャーパート以外に、途中で捜査パートと推理パートと
いうものが入ります。
捜査パートは、事件現場の捜査を行う物で、クリックポイント探しで証拠を
見つけていくというものです。
推理パートは、集めた情報を元に、手がかりを挙げていくものです。人物の
情報や証拠などは全て手帳にまとめられており、その中から該当するものを
選んでいく形になります。手帳はいつでも見ることが出来、新しく仕入れた
情報にはマークが付きます。

本作はStarForceによるプロテクトがかかっており、ディスクレス起動不可。
バックグラウンドでの動作は可能です。
主人公の名前は「時坂玲人(ときさかれいじ)」固定です。
シナリオ・プレイ感
ゲームは主人公が冬子から「本当の私を捜して欲しい」と依頼されるところ
から始まります。その後、連続殺人事件の捜査と行方不明者の捜索のために
学園に非常勤講師として通いつつ、事件の謎を解明していく……という感じ。

前半は連続殺人事件に関する情報を集め、解決していくという感じ。
基本的に落ち着いた雰囲気でややシリアスめに進むんですが、ここではまだ
ほのぼのとした雰囲気のイベントも多く用意されています。

後半は冬子にまつわる話や過去の事件などが複雑に絡み合い、それらを全て
解明していくという感じ。ここではおちゃらけた雰囲気もほとんどなくなり、
シリアスで、重苦しい雰囲気になります。

ラストは様々な終わり方がありますが、ほとんど全てがどこか切ない、重い
終わり方。むしろ、明確に陰惨・凄惨な、えげつない終わり方も多く、
プレイしていてかなりヘコみます。見事なまでに救いがないです。
諸手を挙げてハッピーエンド、なんてものは一切ありません。
「探偵は、事件は解決できるが人は救えない」という言葉が、とても重く胸に
響きます。

特徴としては、やはり捜査パートと推理パートでしょうか。証拠の品を探し、
それらの中から手がかりを掴んでいくという作業を実際にやることになり
ますので、自分で謎を解いているというのが実感できて感情移入しやすい
です。証拠品を見つけられなかったり、推理が間違っているとバッドエンドに
突入したり、物語をユーザが左右しているという感覚が強く、ゲームらしい
ゲームという感じです。

そしてやはり印象に残るのは描写の凄惨さ。猟奇殺人がいくつも起こるわけ
ですが、そのほとんどがしっかり描写されます。ええ、死体をばらす……と
いうか、生きたまま解体するようなシーンが(T_T)
これは、設定で飛ばすようにとか出来なかったんですかね……。

そして何より、親しくなったキャラ達が惨殺されていくというのは、ちょっと
見ていてつらいものがあります。選択によって回避できるシーンもありますが、
どうやっても必ず殺されるキャラが多数いるわけで。
お気に入りのキャラが殺された日にはもう(T_T)

プレイしていて気になったのは、手帳に掲載される情報。思っていたのと
違う記述がされていたり、まだ見ていない情報が載っていたりと、若干
整合性が怪しい部分がありました。
# まだ「殻ノ少女」を見ていないのに、手帳にはしっかり書かれていたり。

あと、既に殺害されている描写がされているのに、無事を祈って捜査を続け
たりすることかありますが、これはちょっと空々しく感じました。
もちろん、時系列に並べたらそうなるんでしょうけど、そのあたりはもう
少し見せ方を工夫して欲しかったなー、と思いました。

H度は低め。キャラによって回数はまちまち。基本的には1回で、1回もない
キャラクターも結構います。夏目さんは多すぎです(笑)
内容的には流されてそのまま……という感じのものが多く、落ち着いた
雰囲気であっさり終わることが多いため、やや物足りないです。
それに、フラグをきっちり立てていないとそもそもHシーン自体が起こら
ないことが多く、TRUE ENDを見たのにHシーンは2回しかなかった、なんて
こともありました。

テキストは誤字等はほとんど気になりませんでしたが、独特の文体でかなり
読みづらいです。当て字に近い漢字がルビも無しで出てくるので、雰囲気を
しっかり掴んで読んでいないと正しく読めないことも多いです。
たとえば、「己」と書いて「おれ」と読むのですが、ルビが付くのは初回
だけで、それを見逃すとずっと読みが解らないということに。
「知る」を「識る」と書いたりとか、「ないしょ」を「内証」と書いたり
とか、「じっとする」を「凝とする」と書いたりとか、「おとなしく」を
「温和しく」と書いたりとか、雰囲気重視で、読みやすさは二の次という
印象を受けました。
プレイ時間・難易度
ゲームは3月3日から始まります。
ゲーム期間は約1ヶ月半。基本的には1日ずつプレイしていく事になります。

ワンプレイは5〜14時間。やたら幅がありますが、5時間というのは最短の
バッドエンドなので、最後まできっちりプレイすれば、12〜14時間ぐらいは
かかるかと思います。
基本的にメインのシナリオは一本なので、それをクリアしていれば、2周目
以降は派生するシナリオの回収となるため、スキップを使えばかなり短縮
出来るかと思います。

難易度はかなり高め。証拠品を1つ見逃したり、推理を1つ間違えただけで
クリアできなくなり、またどこで間違えたのかも分かりづらいため、何度も
繰り返しプレイして色々試すことになります。
一部、かなり無理矢理な推理もあったりと、かなり大変です。
また、イベントの回収はもっと大変で、各ヒロインのイベントを回収する
ためには、全てのイベントを見て、選択肢を1つも間違えないぐらいの
シビアな条件になっているようです。
特に冬子は、完全クリアの条件にもなっているのですが、ワザとひねくれた
選択をしないとクリアできなかったり、かなり嫌らしい作りになっています。
ちなみに私が最初にバッドエンドになった時も、捜査パートのクリック
ポイント探しで必要な情報を見つけきれなかったからでしたし。
スカートのポケットとか普通気付かないと思うんですけど(^^;
あと、画面が結構暗いことが多いので、輝度を下げたモニタでプレイして
いると、証拠品が見えなかったりすることもありますので注意。
本の上に乗っている本とか、血まみれの包丁とか、暗すぎて全然見えなくて
どうしようかと思いました(^^;
他にも、特定の証拠を見つけてしまうと、他の証拠がまだ残っていても捜査
パートが終了してまったり、ある人に話を聞く前に別の人に話を聞いておか
ないと最後まで行けなかったりと、もはや理不尽なレベルの難易度です。
総評
お奨め度ですが、しっかりとした推理物が好きな人にお奨め。
謎が謎を呼ぶ複雑に絡み合ったストーリーで、読んでいてぐいぐい引き込まれる
ような感じですし、緊迫感や迫力、そして切なさややるせなさをしっかりと
味わう事の出来る、感情移入しやすい力のある作品だと思います。
また、捜査パートや推理パートはユーザの操作によって状況が変わるため、
推理しているという実感が得られていいですね。
まあ、その分、難易度が跳ね上がっているので、一長一短ですが……。

ただ、前半こそじっくり丁寧に描かれていて、事件が一つずつ起こっていったり、
謎が一つずつ判明していったりと腰を落ち着けてプレイ出来るのですが、後半は
どんどん事件が起こり、謎も芋づる式に一気に解決していくような感じで、やや
駆け足感が強く、また謎解きも若干強引で、ちょっともったいない気がしました。

そして、作品の目的はあくまで謎解きで、ヒロインとの恋愛は二の次なので、
お互いに惹かれ合う描写とか、心を通わせ合う描写なんかはほとんどなく、
状況に流されて身体を重ねるという感じで、Hシーンに関してはほとんど
おまけという印象が強かったです。内容も薄いですし。

しかし、そういう点を差し引いても、とても力のある読み応えのあるシナリオで、
緊迫感のある息もつかせぬ展開は、先が気になり、一気に読み進めてしまう程
でした。……まあ、簡単にはクリアできないので、何度も繰り返しプレイする
ことになるわけですが……。

絵も綺麗で、キャラクターも魅力的で、システム的にも面白く、とても良く
出来た作品だと思います。……まあ、その綺麗な絵でエグいシーンが描かれて
いたり、魅力的なキャラクターを惜しげもなく殺したりするわけですが(^^;

ともあれ、エグい描写に耐えられて、難易度が高くても挫けない人は是非
どうぞ。ものすごい人を選ぶ作品だとは思いますが、許容できれば内容的には
かなり楽しめると思います。

なお、カルタグラの登場人物が何人か出てきますので、そちらもプレイして
いればより楽しめるかと思います。もちろん、プレイしていなくても問題なく
楽しめるとは思いますが。
……てゆーか、秋五ってこんなにユカイな奴だったのか(^^;

最後に。殻ノ……少女? ←そこに疑問抱いたらダメ(笑)


以下、ネタバレ満載なので、これからプレイ予定の人は見ないこと。


事件が1つ解決して、「終わった−」と思ったら、むしろそこからが本番で
どうしようかと思いました(^^;

綴子ーっ(T_T)
かなりお気に入りのキャラだったので、切なかったです……。
なんとか助けてあげたかったな……。
まあ、一番お気に入りキャラは初音なんですけど、出番少ないし、
ストーリーに絡んでないし(^^;

しかし今回は、ホント惜しげもなくヒロイン殺しますね(^^;
まさか和菜まで殺されるイベントがあるとは思いませんでした……。
もう平和に過ごさせてやれよ(^^;
というか、主人公自身の手で殺すとか、さすがにキツいっス(T_T)



ロビーに戻る  レビュートップに戻る